僕の幸せは、星をめぐるように。
「わたしね、その柳下さんも、平木も、気の毒でたまらないんだ」
『ん?』
「柳下さんはわたしに打ち明けてすっきりしたかもしれないけど、平木はずっとわたしを目の敵にしながら生きていかなきゃならないのかなって」
『そうだね。何かかわいそうだね』
「わたしはもうみんなのおかげで救われたから、いいんだけど。
平木はどうやったらこんな仕方のないスパイラルから解き放たれることができるんだろう」
『……トシミは優しいね。でもおれもその気持ち分かるかも。
またその平木さんって子と会う機会はあるんでしょ?』
「たぶんあると思う」
『その時に話でもしてみたら?』
「あ……そうだね」
『その子の思いを知った上で、何かできることはないか考えてみようよ』
「うん、ありがとう」
言葉とともに吐き出される白い息は、暗くなった空に次々と溶け込んでいく。
家が見えた頃には、すっと心の中のもやが晴れかけていた。
凍りかけている雪に、家の明かりが反射して、キラキラと星のように光っていた。
「せーちゃんは家着いた?」
『うん。もうすぐかな』
「そっか。たまには、のんびりせーちゃんと一緒にいたいなー」
『そうだねー。おれもだよ』
もう電話を切らなきゃいけないかな、と寂しい気持ちになっていると、
阿部くんは何かを思いついたように、こう言った。
『……あ、そうだ! じゃ、おれからも相談なんだけど』