僕の幸せは、星をめぐるように。
2月/February 帰省
「ぎんが~てつど~のよ~る~」
「え? 突然唸りだしてどしたの!?」
「……ごめん。歌ってたんだけど。ほら、文化祭ステージで最後にやってた曲」
「あ~! あの曲ね」
うう、やっぱりわたし、本当に歌が下手なのかも……。
しかも電車じゃなくて、今乗ってるの新幹線だし。
隣にはもちろん阿部くん。
東京行きのはやぶさに乗って、2人でお菓子を片手に喋っていた。
『次はーくりこまこうげんー』というアナウンスが聞こえた。
おおっ、ようやく岩手を脱出できたらしい。
――そういえば、『銀河鉄道の夜』ってどんな話だったっけ?
小学校の頃に授業で、登場人物が猫として描かれたその映画を見たことがあるけど、遥か遠い記憶だ。
確か、主人公ジョバンニはいじめられっこで、お母さんが病気で、お父さんは家をずっと空けていて。
でも、それを気にかけてくれるカムパネルラって友達がいて。
その2人が銀河鉄道に乗って、星たちをめぐる旅をする話だったっけ。
旅の途中で、いろんな鳥を捕まえては食べ物にする微妙なキャラが出てきてはいなくなり、
氷山にぶつかり沈んだ豪華客船からやってきた3人組と仲良くなっては別れたり。
ラストは衝撃的だった気がするんだけど、よく覚えていない。
阿部くんに聞いてみたけど、「あれ、めちゃくちゃすごい物語だし、自分で読んで確かめないともったいないよ」と言われてしまった。
ま、気が向いたら読んでみようかな。