僕の幸せは、星をめぐるように。
☆ ★ ☆
阿部くんからの相談は、「おれと一緒に実家に来てみない?」ということだった。
2月半ばに3連休がある。
そこで一旦帰省しようかと考えている、とのこと。
阿部くんのおばあさんは最近ちょっと体調が悪いらしい。
本当は春休みに実家に行くつもりだったけど、3月後半は苗植えや種まき作業があるため、おばあさんの手伝いに専念したいって言っていた。
ラッキーなことに、顧問とコーチの都合で、わたしも3日間部活が休みになっていた。
『こっちで彼女できたことねーちゃんに言ったら、すごく喜んでて、観光ついでに一緒に遊びに来なよ、って。
友達にも向こうで楽しくやってること報告したいし。あれだけ迷惑も心配もかけたから』
『でも、わたしが行ってもいいの?』
『うん。何もないとこだけど是非おいでって親も言ってた。
で、1泊は実家でしようと思うけど、もう1泊、こっそり2人で別のとこ泊まらない?』
スマホ越しにその言葉が耳に入ったとき、
わたしは雪に足を滑らせて1人でコケそうになっていた。
ちょちょちょっと、それって!?
……そういうことだよね!!
わたしは慌てて右へ左へ行ったり来たりしながら、
必死に心を落ち着かせて『は、はいっ』と答えた。
バイト代結構たまったから、お金のことは心配しなくていいよ、って言われたけど、
わたしもお年玉の貯金あるから大丈夫、と伝えておいた。
そそそそそりゃー緊張はするけど、
阿部くんと2人きりでゆっくりできることは嬉しい。
えーとえーと。
幸いなことに陸上のおかげで、体はいい感じに引き締まっている。
筋肉が結構ついて、少し胸が小さくなっちゃったけど。
か、可愛い下着とか買った方がいいのかな? それともセクシー系?
こ、ここここんなわたしで大丈夫でしょうかー、ユカチン先生ー!(なぜだ)
父にはもちろん内緒。
こっそり母に申請してみた。
別に遊びに行くのはいいけど、さすがに阿部くんの実家に泊まるのはお互い気を遣うし大変だべ? とのこと。
よって、阿部くんの家ではご飯を頂くくらいで留めておき、
大宮に住んでるイトコ(オタク女子)に連絡して、夜はそこに泊めさせてもらうことになった。
う、こりゃ一晩中オタトークに付き合わされそう……。