僕の幸せは、星をめぐるように。
「大宮までおれ窓側でいい? しばらく地元にも来ないだろうから、景色見ながら帰りたくて」
「いいよー。ってそれ完全に眠るパターンでしょ」
「あはは、だって寝不足じゃん」
「まあ、そうですけど……」
新幹線に乗り、窓際に阿部くん、彼の1つ右の席にわたしが座った。
トゥルルルルルルと発車のサイレンが鳴る。
阿部くんは既に椅子を倒して、窓の外、流れる人たちを眺めている。
荷物をごそごそと整理してから、わたしもゆっくり席を倒した。
「せーちゃん、ラスクちょっと食べちゃおうよ」
「…………」
「白チョコと黒チョコどっちがいい?」
「…………」
「せーちゃん?」
「…………」
彼からは何の反応もない。
まさか――。
ずん、と重い心臓音が体中に響く。
わたしは、彼の奥――窓の外に視線を移した。
ああ……どうして!?
何かを言おうとしても、唇が痙攣してしまい、空気だけが口からあふれていく。
阿部くんの視線の先には、
人が減ったホームの上で、
さっきの女性が、胸を押さえて肩で息をしている姿があった。
きっと走ってここまで来たのだろう。
ゆっくりと新幹線は動き出し、その女性も足を進めるけど、追いつけるはずもない。
走りながら、苦しそうな顔で、懸命に口を動かしている。
――『阿部くん!』って。