僕の幸せは、星をめぐるように。
わたしは目を閉じた。
阿部くんは、たぶん眠ってはいない。
ずっと窓の外を見ながら、無言で時を過ごしている。
彼の心は今、どこにあるのだろう。
閉じたまぶた越しに、雪景色の白い光をかすかに感じた。
再び目を開けた時、彼がもういなくなっているような予感がして、
わたしはずっと目をつぶっていた。
ごうごうと新幹線がスピードに乗って唸る音だけが聞こえてくる。
――星が燃える音ってこんな感じなのだろうか。
みんなの幸(さいわい)のためのために、自分の体をどうかお使いください、
と神に願ったサソリが、ごうごうと赤い火をあげている。
――それとも川の流れる音にも似ているのだろうか。
天の川にそびえ立つ、美しくて大きな十字架。
沈没した船からやって来た青年と少女たちが、讃美歌をBGMにそのなぎさへと向かっていく。
夢なんか見ていないけど、
わたしたちの乗った銀河鉄道は、
星たちをめぐりながら、東北を目指している。
あの物語では、
ジョバンニとカムパネルラは銀河鉄道で、様々な出会いと別れを通じて、
本当の幸せとは何か、2人で考えていく。
そして、
みんなの本当の幸せを探しにどこまでも行こう、
とジョバンニが決意したとき、
カムパネルラは消えてしまったんだ。