僕の幸せは、星をめぐるように。


☆ ★ ☆


阿部くんが4月から地元に帰ることが決まったのは、

3月に入ってすぐのことだった。


泣きながら、嫌だと100回以上言った。

彼も同じくらい嫌だと言っていた。


でも、家庭事情だから仕方がない。

阿部くんのおばあさんが長く入院することになってしまったのだ。


そこで、隣に住んでいる阿部くんのおじさんが、仕事を辞め、

兼業農家から専業に変わり、畑や田んぼを継ぐことになったらしい。


阿部家では、そのことについて親戚同士で会議があったとのこと。


結果、おばあさんのいない家で、阿部くんが1人暮らしをするわけにはいかないし、

おじさんの家に居候するわけにもいかず、

ちょうど両親が編入できそうな高校を見つけてくれたことから、

彼は地元に帰らざるを得なくなった。


「トシミちゃんには申し訳ねぇことなっただぁ。退院できたらまた遊びさ来てけれ」


ある日、阿部くんの家に遊びに行ったところ、

おばあさんが夜ごはんをごちそうしてくれた。


「いえいえ、トキさんこそ体お大事にして、また元気で畑に立って下さいね」


「にゃーお」


「ありがとうね。せーいちも浮気されねぇよう、まめに連絡取らねばならねな」


「あはは、分かってるよ。大丈夫」


「ふにゃーん」


炊きたての甘いご飯。

茄子と大葉の天ぷら、ほうれん草のおひたしに、人参と大根の豚汁。


クロがそのへんをうろうろする中、わたしは素材と味付けのハーモニーを楽しみながらどんどんはしを進めた。


やっぱり、めちゃくちゃ美味しいんですけど!
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