僕の幸せは、星をめぐるように。
☆ ★ ☆
「トシミ~、うちちょっと具合悪いし、あとお願いしていい?」
わたしの後ろで雑貨の品だしをしていたはずの店長。
そう言って、バックヤードに戻ってしまった。
わたしはため息を吐きながら、接客をこなしつつ、冬の新作を棚に並べた。
雑貨は好きだし、木の香りが漂う店内も好きだ。
でも、時々息苦しくなる。
このままここで一生を終えるのだろうか。
高3の時、進学するか就職するか、わたしは迷った。
インターハイ出場という目標を達成したためか、力尽きて勉強も就活もあまり身が入らなかったのだ。
結局、第一志望のスポーツアパレル店には面接で落ちてしまい、社員登用のある今の職場でバイトとして働いている。
今日はフルで働いたため、地元の駅に着くと夜9時半になっていた。
心身ともに疲れ、だるい体を動かし、いつも通り自転車で家に向かう。
この時間になると歩行者はほぼいない。
「あか~いめ~だま~のさっそり~」
歌いながらペダルを漕ぐと、すぐ下りの坂道へ突入した。
自転車はどんどんスピードを上げていく。
背の高い街灯が等間隔に並ぶ坂道。
その明かりを通り越すたびに、わたしの影はコンパスのように後ろから前へくるっと回り、
次の明かりによる新たな影を後ろに生みだしていた。
そのまま、幻想的な光たちに彩られた、銀河鉄道の巨大壁画の前にさしかかる。
わたしは、ブレーキレバーを深く握った。
ギギー、と金属がこすれる音が壁に反射して戻ってきた。
今日のアウターは、最近買ったお気に入りのモッズコート。
わたしはその右腕をまくった。
そこには、編みこまれた革ひもでできたブレスレット。
今日、3年ぶりくらいに付けてみた。
確かクリスマスプレゼントとして、偶然2人でおそろいのものを買っていて、ここで渡し合ったんだっけ。
とめ具の色はわたしのが赤、彼のは青。
その時繋いだ手の感触は今でもリアルに思い出せる。