僕の幸せは、星をめぐるように。
★ ☆ ★
とりあえず、夜ごはんを食べに近くの居酒屋へ。
僕もトシミちゃんもビールを注文した。あと適当におつまみも。
「クニオとユカチン、まさか本当に結婚まで行くとはね~。ってか、わたしたちだいぶ貢献したよね?」
「本当そうだよね。あー懐かしいなぁ~。サマロクで作戦練ってさー」
「でもクニオ、その時違う人と手つないでたんだってね」
「ね、それまじウケるよね。まあ、もともとお似合いな感じだったけど」
トシミちゃんは、美人とか綺麗なタイプではなく、どちらかというと童顔で可愛い系。
あの町の方言だと、めんこい、って言うんだっけ。
彼女は笑う時、口角も、ほっぺたも、きゅっと上向きになり、
二重のぱっちりした目を細めながら、顔全体を笑顔にする。
幸せそうなその表情が、僕は好きだった。
僕の正面で、彼女はそんな笑顔を浮かべながら、表情豊かに話をしている。
「そういえば、冬休みわたしユカチンの部屋、めちゃくちゃ掃除したんだよ」
「そうだったんだ。あれ以降は頑張って綺麗にしてたらしいね。主にクニオが」
「そうそう。それウケるよねー!」
高校時代の――あの町での思い出がよみがえってくる。
あの1年間は、とても楽しかった。
目の前にいるトシミちゃんと一緒に幸せな日々を過ごしていた。
あの日々が懐かしくて、切なかった。
「今日泊まるとこあるの?」
「駅前にホテルあるよね? そこにしようかなって」
「いいよ、悪いし。家でよかったら泊まれば?」
「でも……」
「わざわざ来てくれたんでしょ? 布団予備あるから」
「うん。じゃお言葉に甘えます」
マンションまでの帰り道、冷たい風が吹き、僕と彼女は、それぞれ自分のパーカーのポケットへ手を入れた。
あの頃、何度も握った手は、この町と東北のあの町との距離以上に、遠い。