僕の幸せは、星をめぐるように。
スタジオ受付のバイトを終えると、すでに空には星が瞬いていた。
あの町に比べると、ここは人口の光が多すぎる。
頭上に広がる星座を探すには、立ち止まって目をこらさないといけなかった。
「ん?」
ポケットの中でスマホが振動していた。
着信は、クサマくん。
『阿部ちゃん! もしかしてトシミちゃん、来てる?』
通話マークを押した途端、クサマくんが勢いよく話しだした。
「え? 何で知ってるの?」
『サーセン! 俺が召喚しました!』
「は?」
聞くと、僕と先生が不倫してるかもしれない、と彼女に伝えたらしい。
――はい?
そういえば、前にクサマくんにだいぶお酒飲まされて、べろんべろんのまま根掘り葉掘り聞かれた。
その時に、部屋来ない? って先生に誘われたこと、言っちゃったような。
でも実際には行っていない。
ああ、早とちりも甚だしい……。
「さすがクサマくんだね。おれそんな危ない橋、渡る人に見える?」
『へ? だってお前、急に岩手行ったかと思えばこっち戻ってきたり、急にトシミちゃんと別れたり、
急に新しい彼女作って別れたり、時々突拍子もないことするじゃん』
「いやいや……さすがに不倫はしないって」
『良かった、それ聞いてマジ安心したよ~。ってか、俺余計なことしちゃった? マジごめん!』
「別にいいよ。むしろ久々にトシミちゃんと会えたし。来年友達の結婚式あって、そこで急に再会するよりは良かったかも」
『そっか、なら良かった~。ちなみに先生とは、本当はどーなってんの?』
「どうもこうも、仲の良い年上の友達みたいな感じ? 向こうはどう思ってるか知らないけど」
先生はよく分からない。
旦那がいるくせによく連絡をくれるし、ご飯にも誘ってくる。
中学の頃、好きになっちゃいけなかった人は、今もなお、好きにはなってはいけない人のまま。