僕の幸せは、星をめぐるように。


スタジオ受付のバイトを終えると、すでに空には星が瞬いていた。


あの町に比べると、ここは人口の光が多すぎる。

頭上に広がる星座を探すには、立ち止まって目をこらさないといけなかった。


「ん?」


ポケットの中でスマホが振動していた。

着信は、クサマくん。


『阿部ちゃん! もしかしてトシミちゃん、来てる?』


通話マークを押した途端、クサマくんが勢いよく話しだした。


「え? 何で知ってるの?」


『サーセン! 俺が召喚しました!』


「は?」


聞くと、僕と先生が不倫してるかもしれない、と彼女に伝えたらしい。



――はい?



そういえば、前にクサマくんにだいぶお酒飲まされて、べろんべろんのまま根掘り葉掘り聞かれた。

その時に、部屋来ない? って先生に誘われたこと、言っちゃったような。

でも実際には行っていない。


ああ、早とちりも甚だしい……。


「さすがクサマくんだね。おれそんな危ない橋、渡る人に見える?」


『へ? だってお前、急に岩手行ったかと思えばこっち戻ってきたり、急にトシミちゃんと別れたり、

急に新しい彼女作って別れたり、時々突拍子もないことするじゃん』


「いやいや……さすがに不倫はしないって」


『良かった、それ聞いてマジ安心したよ~。ってか、俺余計なことしちゃった? マジごめん!』


「別にいいよ。むしろ久々にトシミちゃんと会えたし。来年友達の結婚式あって、そこで急に再会するよりは良かったかも」


『そっか、なら良かった~。ちなみに先生とは、本当はどーなってんの?』


「どうもこうも、仲の良い年上の友達みたいな感じ? 向こうはどう思ってるか知らないけど」


先生はよく分からない。

旦那がいるくせによく連絡をくれるし、ご飯にも誘ってくる。


中学の頃、好きになっちゃいけなかった人は、今もなお、好きにはなってはいけない人のまま。


< 290 / 317 >

この作品をシェア

pagetop