僕の幸せは、星をめぐるように。
☆ ★ ☆
「阿部くんおかえり!」
家に帰ると、台所からトシミちゃんが顔を出した。
夜ご飯を作ってくれているらしい。
「何作ってるの?」
「ん? スーパーに盛岡冷麺あって買ってきちゃった。こっちにも売ってるんだね」
きゅうりやゆで卵、ミニトマトにキムチ。
まな板の上に散らかった具材が、どんぶりに入った半透明の麺の上に飾られていく。
作業をするトシミちゃんの様子を眺めていると、
「いーから、阿部くんは向こうで待ってて!」
と言われ、キッチンから追い出されてしまった。
――ん?
ベッド近くに置いてあった買い物袋に目がとまる。
その紙袋は半びらきになっていて、そこから東京タワーとルミネtheよしもとのパンフレット、
あとなぜかフリーの求人誌が詰め込まれているのが見えた。
どうやら今日は観光&買い物に行っていたらしい。
言ってくれれば連れて行ってあげたのに。
そう思いながら、僕は3年ぶりくらいにつけた革ひものブレスレットを外し、小物入れに置いた。
バイト中、腕まくりをする度にこのブレスレットが目に入った。
それだけで、今日はいつもより頑張れた気がした。
「美味しかったよ。ありがとう」
「良かった~。って、スープ付きだし不味くなるはずないけどね」
「じゃ、洗い物はおれやるから、トシミちゃんは休んでて」
「ううん。居候中ですから働きますよー」
結局、一緒に後片付けをすることになった。
いつぞやと同じで、トシミちゃんがスポンジで食器を洗う係、僕がふきんで水気を取る係。
彼女は昔よりも慣れた手つきで、次々とどんぶりと鍋を綺麗にしていった。