僕の幸せは、星をめぐるように。


☆ ★ ☆


「阿部くんおかえり!」


家に帰ると、台所からトシミちゃんが顔を出した。

夜ご飯を作ってくれているらしい。


「何作ってるの?」


「ん? スーパーに盛岡冷麺あって買ってきちゃった。こっちにも売ってるんだね」


きゅうりやゆで卵、ミニトマトにキムチ。

まな板の上に散らかった具材が、どんぶりに入った半透明の麺の上に飾られていく。


作業をするトシミちゃんの様子を眺めていると、

「いーから、阿部くんは向こうで待ってて!」

と言われ、キッチンから追い出されてしまった。


――ん?


ベッド近くに置いてあった買い物袋に目がとまる。


その紙袋は半びらきになっていて、そこから東京タワーとルミネtheよしもとのパンフレット、

あとなぜかフリーの求人誌が詰め込まれているのが見えた。


どうやら今日は観光&買い物に行っていたらしい。


言ってくれれば連れて行ってあげたのに。


そう思いながら、僕は3年ぶりくらいにつけた革ひものブレスレットを外し、小物入れに置いた。


バイト中、腕まくりをする度にこのブレスレットが目に入った。

それだけで、今日はいつもより頑張れた気がした。




「美味しかったよ。ありがとう」


「良かった~。って、スープ付きだし不味くなるはずないけどね」


「じゃ、洗い物はおれやるから、トシミちゃんは休んでて」


「ううん。居候中ですから働きますよー」


結局、一緒に後片付けをすることになった。


いつぞやと同じで、トシミちゃんがスポンジで食器を洗う係、僕がふきんで水気を取る係。

彼女は昔よりも慣れた手つきで、次々とどんぶりと鍋を綺麗にしていった。


< 292 / 317 >

この作品をシェア

pagetop