僕の幸せは、星をめぐるように。
「懐かしいね、そのTシャツ。おれもまだ持ってるよ」
流しの上にある棚から、グラスを2つ取り出し、ソファーへ向かった。
「うん、意外と丈夫だから、部屋着として長持ちしてるんだよね」
ぽこぽこと音を出しながら、トシミちゃんは僕が手にしたグラスへビールを注ぎ入れる。
泡だらけのグラスをテーブルに置き、次は僕が彼女のグラスに注いだ。
「かんぱーい」
昨日飲みに行った時も思ったけど、絶対トシミちゃんは酒豪だ。
あっという間にグラスが空になる。
ちなみに僕はそこまで強くない。
「阿部くんとこうやってお酒飲めるのって不思議。こんな機会二度と来ないって思ってたから」
「そうだね」
テレビはバラエティ番組を映していて、芸人さんたちがわいわいと騒がしくしていた。
トシミちゃんがお土産で持ってきてくれたビールは、コクが強く、口の中に甘みがどんどん広がっていった。
「…………」
彼女は芸人さんのギャグに笑いながら、ビールを口に運んでいたが、
時々、ちらっと僕を見て、何かを話そうとしている。
「あの、阿部くん……!」
彼女が思い詰めた様子で、その口を開いた瞬間、
「……おれ不倫してないし、しないよ」
と、僕はテレビに視線を向けたまま、その呼びかけをかき消した。
「へっ」
彼女は言葉を止め、体を軽くびくつかせた。