僕の幸せは、星をめぐるように。
トシミちゃんは、ぎゅっと僕の腕を掴みなおす。
そして、ゆっくりと大きな二重の瞳を閉じた。
自分の世界は、3年前のあの町での彼女との日々に戻っていた。
僕は、下ろされた彼女の茶色い髪の毛に触れた。
「……っ!」
しかし、彼女がびくっと体をこわばらせたのを
僕は見逃さなかった。
少し手を震わせながら、そこから離れ、視線を外す。
彼女も、はっと何かに気がついたようで、目を開けた。
「ごめんね。だめだよ」
僕は自分に言い聞かせるように、そうつぶやいた。
彼女をちらっと見ると、
二重の目には涙がどんどん溜まってきたようで、
その瞳に写る自分の姿が揺らいでいた。
「阿部くん……わたし……」
「トシミちゃん。無理しないで」
「……っ」
とうとう彼女の目から一滴、それがあふれ出した。
あ――。
僕はそれがこぼれ落ちないよう、親指でぬぐっていた。
そのまま、いつか彼女がそうしてくれたように、ぺろっと舐めるとほんの少ししょっぱい味がした。
その味は僕の胸を切なく締め付ける。
『トシミがそっちさ行ったってことは、阿部くんに話があるからだべ? 今度こそはちゃんと納得いくまで話し合いなさい! んじゃ!』
さっきユカチンから言われたことを思い出す。
彼女がどうしてここまで来たのか、僕は本当のことを知っているのだろうか。