僕の幸せは、星をめぐるように。
「急にごめんね。明日、帰るね」
トシミちゃんは、左右交互に視線を動かしながら、
低く、かすれた声でそう言った。
「分かった」
僕もソファーに座りなおし、焦点の合わない彼女の目を見つめた。
どうしよう。今すごく、彼女にキスがしたい。
そういえば、トシミちゃんと付き合う前、一回だけ勢いのままにキスしちゃったことあったっけ。
でも、今はそうしてはいけないことくらい、知っている。
それから僕は先生とのことを話した。
高1の終わりごろ、ちょうど編入準備で僕が実家に帰っていた時、先生から再び手紙が届いたこと。
そこには、また色々とお話したいね、という内容と、新しい連絡先が書かれていた。
もちろんトシミちゃんと付き合っていたから、連絡しなかった。
でもあの町を離れる時間が近づくにつれ、トシミちゃんがあまり笑わなくなった。
むしろ悲しそうな顔をしている時が増えた。
自分のせいで、トシミちゃんの楽しい生活を崩してしまうのがどんどん怖くなった。
先生に連絡をしたのは、トシミちゃんと別れて1年くらい経ってから。
僕は先生に連絡をしようか、しないか、ずっと迷っていた。
思い切ってメールしたのは、
進路のことで悩んでいたことと、もらった手紙を無視し続けることに対して罪悪感がふくらんでいったことから。
先生にはその時すでに婚約者がいた。
でも、美味しいお店に連れて行ってくれて、僕の悩みを聞いてくれた。
先生なりの視点やアドバイスを交えて、色々なことを話してくれた。
その時間は楽しかった。
先生が結婚してからも、時々ご飯に行ったり、買い物に付き合ったりした。
次第に先生は、
旦那さんとケンカをすると、僕に連絡をしてくるようになった。
ある時、部屋に来ない? って誘われた。
先生はやっぱりそこまで強くはない。
でも、このままじゃ良くないと思った。