僕の幸せは、星をめぐるように。
「そんなときに、突然トシミが家に来たの。びっくりしたよ」
「そうだったんだ」
お土産で買ってきてくれたビールはもちろん、冷蔵庫に2、3本入っていたビール缶も全てなくなってしまった。
彼女は何杯飲んでも変わらない。
しらふのよう。
僕は酔いが回ってきたようで、いつの間にか昔のように彼女を呼び捨てにしていた。
すると、
「せーちゃん顔赤くなってきたよ」
と、彼女もまた、普通にあの時と同じ呼び方をしてくれた。
そして、熱くなった僕の頬をぷにっとつねってきた。
「こら、やめなさい」
自分落ち着け、と思いつつも、やっぱり懐かしい鼓動が体中に響き、彼女との日々を鮮明に思い出してしまう。
でも、なぜだろう。
その幸せな時間がよみがえってくる度に、
再び僕の前から彼女がいなくなってしまうような予感に襲われた。
この町とあの町との距離という意味ではなく。
「せーちゃん、今日ベッドで寝てね。わたしソファーで寝るから」
「あー、それは悪いし大丈夫だよ」
「バイトも学校あるし、ゆっくり寝た方がいいでしょ?」
「いいよ。お客さんですから」
「じゃ、一緒に寝る?」
「はい?」
何を言っているのこの子は!
こ、この展開、危なくないですか……。
どう返せばいいか分からず、僕は無言になってしまう。
すると、
「あ、冗談だって~」と言って、彼女は顔を伏せた。
でも、隣にいてくれた方が、彼女がどこにも行かないで、ここにいてくれるような気がした。
「一緒に寝たい」
「…………」
「あ、変な意味じゃなくて! ほら、今日冷えるっていうし。2人の方があったかいでしょ」
「え? う……うん」
ソファーに体育座りをしながらそう頷くトシミちゃん。
ぎゅっと抱きしめたら、どんな反応をするんだろう……。
って、何を考えているんだ、おれ!
テンパってるのがバレないよう、必死で気持ちを落ち着かせている間に、
トシミちゃんはビールの缶を片付け、寝る準備を始めた。