僕の幸せは、星をめぐるように。
「ありがとう。うちのばーちゃん、ちょっと腰痛めてて」
ビニールハウスの中、
足元、マルチと呼ばれる黒ビニールの穴の開いた部分から、
つると葉っぱが支え棒に絡まりながら、くるくると伸びている。
そこから大小さまざまなきゅうりがなっていた。
「わー、美味しそうー。みそかマヨネーズつけて、パキッと食べたい」
「おれは最近明太子派だな~。あ、もちろんお礼にあげるよー」
大きくなった実を傷つけないようにはさみを使って切り離し、
曲がっているのと、真っ直ぐなのを分けて、かごの中に入れていく。
阿部くんの家は農業をしているらしい。
家、と言っても、阿部くんはここでおばあさんと猫と暮らしている。
今日はその手伝いで呼ばれたようだ。
ビニール越しに見えたのは、どんよりとした灰色の空。
葉っぱ越しに見えたのは、真剣な顔できゅうりを収穫している阿部くんの姿。
阿部くんは快晴よりも、これくらいの空の下の方が似合っている。
(ちょっと失礼?)
少し、その顔に見とれていたら、阿部くんもわたしに気がついたようで、手を振って笑った。
わたしも一本手にしたきゅうりを振って応えた。
体育大会が終わってから、ずっと鬱々とした気分だったけど、
この天気に反して、わたしの気持ちは少しずつ晴れやかになっていった。