僕の幸せは、星をめぐるように。



「ありがとう。うちのばーちゃん、ちょっと腰痛めてて」


ビニールハウスの中、

足元、マルチと呼ばれる黒ビニールの穴の開いた部分から、

つると葉っぱが支え棒に絡まりながら、くるくると伸びている。


そこから大小さまざまなきゅうりがなっていた。


「わー、美味しそうー。みそかマヨネーズつけて、パキッと食べたい」

「おれは最近明太子派だな~。あ、もちろんお礼にあげるよー」


大きくなった実を傷つけないようにはさみを使って切り離し、

曲がっているのと、真っ直ぐなのを分けて、かごの中に入れていく。


阿部くんの家は農業をしているらしい。

家、と言っても、阿部くんはここでおばあさんと猫と暮らしている。


今日はその手伝いで呼ばれたようだ。


ビニール越しに見えたのは、どんよりとした灰色の空。

葉っぱ越しに見えたのは、真剣な顔できゅうりを収穫している阿部くんの姿。


阿部くんは快晴よりも、これくらいの空の下の方が似合っている。
(ちょっと失礼?)


少し、その顔に見とれていたら、阿部くんもわたしに気がついたようで、手を振って笑った。

わたしも一本手にしたきゅうりを振って応えた。



体育大会が終わってから、ずっと鬱々とした気分だったけど、

この天気に反して、わたしの気持ちは少しずつ晴れやかになっていった。

< 45 / 317 >

この作品をシェア

pagetop