僕の幸せは、星をめぐるように。
「今日はこんな感じかな。トシミちゃんありがとう」
「わたしも遠野のおばーちゃん家で、稲刈りとか畑とか手伝ったことあるし。なんか懐かしくて楽しかった~!」
阿部くんのおばあさんの家と、田んぼと道路を挟んだところに阿部くんのおじさんの家がある。
収穫したきゅうりや他の野菜を運び、そのおじさんに預けて今日の作業は終了。
「お昼、ばーちゃんが準備してくれてると思うし、食べてかない?」
「え、いいの? 何か悪いよ~」
「いーからいーから」
そう話しながら、田んぼの横道を歩いて戻る。
成長中の稲は、整列しながら、凛々しく、そよそよと、風になびいていた。
「こっち近道。足元気をつけてね」
阿部くんは20cmほどの小さい水路を、ぴょんと飛んで渡った。
わたしも同じように飛ぼうとしたけれど、
ズボッ、と土のくぼみに足を取られ、一瞬バランスをくずしてしまった。
「おわっと!」
「わっ、トシミちゃん!」
情けない声と片足で無理やりバランスを取ったわたしは、
伸ばされた阿部くんの手にすがりつくしかなかった。
阿部くんもつられて転ばないよう、負けずにわたしの腕をぐいっと引っ張る。
あ……意外と、力あるんだ。
そのまま、勢いよく阿部くんがいる岸に渡り、なんとか難を逃れることができた。
「わーびっくりした。ごめんね、この辺地面ゆるいから」
「ありがと。あはは、わたししばらく運動してないし、カンが鈍ってるのかも」
わたしは再び足が取られないように、丁寧に阿部くんの足跡を追いながら歩いた。
まだわたしは上手く飛ぶことができないようだ。
でも、さっき阿部くんに引っ張ってもらったとき、
わたしは集団という渦に落ちていくのではなく、
ここに存在していたいと思った。