僕の幸せは、星をめぐるように。


阿部くんがよいしょとクロを抱えて、

ちゃぶ台をはさんでわたしの正面に胡坐をかいた。


「よしよーし」

「にゃーお」


猫と戯れる阿部くんの姿が可愛くて、それを眺めながら、


「そういえば、中学の卒アルとかないの?」


と定番の質問をしてみた。


中学時代の阿部くんはどんな感じだったのだろう。


すると、「ないよ。全部おいてきちゃった」とクロの背中を撫でながら阿部くんは答えた。


「置いてきたって?」


「おれの実家に」


「実家?」


「うん。実家に普通に両親とねーちゃんいて、おれだけこの町に来たから」



あ、そうなんだ。

阿部くんだけがこっちきてるんだ。


確かに、おばあさんと2人(+1匹)暮らしと聞いて、何か事情があるのかなと思っていたけど。


何でだろう? 

農業のお手伝いってだけじゃないよね。

隣におじさんも住んでるんだし。


深く聞いてみたかったけど、クロに向かって微笑んでいる阿部くんを見ていたら、今はその時ではないと思った。

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