僕の幸せは、星をめぐるように。


クラスの女子たちに手を引っ張られながら、わたしは着地用の砂場から15メートルくらい離れた場所に到着した。


たぶん陸上部が普段使っているんだろう。

助走路は草や小石がほとんどなく、砂場まで凹凸のない地面が続いている。


シャベルとトンボを片手にしている生徒がいることから、砂場もしっかりと緩められ均されているはず。


はぁー、と深く息を吐きながら、砂場の方を見ると、ギャラリーは手を叩いて、「ト・シ・ミ!」と笑顔でコールしていた。


きっと、皆、何の悪気もなく、ただ好奇心と期待でそうやっているんだろう。


確かに、例えば100m走で東北大会経験者がいたとしたら、その人の走りをわたしだって見てみたい。


わたしのことを、中学は部活やっていたけど、高校では面倒だから辞めた人と同じように見ているんだ。

ケガしたことを知ってる人もいるだろうけど、もう回復して普通に体育に参加しているし。



――15mじゃ、足りない。



頭では嫌だと分かっていても、何百回も中学の頃に跳んでいたから、知っている。


わたしの歩幅ではあと10mくらい下がらないと。


この景色を見ると、バチッと雷のような光のようなものと一緒に、

中学時代、練習や大会でここに立っていた感覚を思い出した。


走り幅跳び自体は嫌いではなかった。

むしろ、風とスピードをまとい、遠くまで跳べる感覚は気持ちが良かった。


ここに着くと、久々に跳んでみたい、

という思いですらほんの少しだけ芽生えてきた。

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