僕の幸せは、星をめぐるように。
「あの、ありがとう。わたし、あんなの初めてでびっくりしちゃって……」
そうつぶやいた瞬間、さっきの体育の時間のことを思い出した。
すると、うっ、と少し息が詰まるような気がした。
息が止まらなくなって苦しむ状態。
ドラマか何かで見たことがある。たぶん過呼吸ってやつだ。
手は繋がったまま。
さっきみた夢から察するに、たぶんわたしから握ったんだろう。
でも、まだ離したくはなかった。
その温かさを感じていたら、すっと心が落ち着いていくような気がしたから。
「今はどう?」
「うん……大丈夫」
「そっか。良かった」
窓の外では別の学年が体育をしているようで、わーわーとした声が風とともに流れてくる。
わたしは、阿部くんの少しごつごつした、固い手を握り直した。
すると、その手はわたしの手を優しく握り返してくれた。
いつか見とれた細くて綺麗な指は今、わたしの手に絡まっている。
胸がきゅんとするとともに、安心で目の奥がつんと痛んだ。
ベッドのすぐ横。
低めの椅子に座った阿部くんは、
軽く首をかしげながら、優しく私を見つめている。
その顔を見ていたら「実はわたし……」と自然と、思い出したくもない中学の頃のことを話し出していた。