僕の幸せは、星をめぐるように。
「…………」
「……阿部くん?」
「ううん。なんかほっとけないの。トシミちゃんのこと」
「え?」
思わず、その顔をじっと見つめる。
しかし、阿部くんはうつむきながら、視線を左側に移していた。
視線が重ならない。
薄い唇はきゅっと閉じられたまま。
浮き出た喉仏が、一回大きく振動する。
「ごめんね」
そう言って、彼は再びわたしの手を握る力を強めた。
ちょっと痛い。
物理的な痛みではなく、心の中が。
「…………」
阿部くんの目は今、この世界にあるもの全てと焦点が合っていない。
この手を離してしまうと、阿部くんが遠くに行ってしまう気がして、
わたしもぎゅっと握り返した。
すると、再び、彼の手には力が込められた。
お互い握ってはゆるめ、握ってはゆるめを繰り返す、わたしたちが結合されたその部分は、まるでひとつの心臓だった。
わたしの静脈を流れた血がその心臓を介して、阿部くんの動脈へ。
そして阿部くんの静脈から再び鼓動を経てわたしの中に流れこんでくるかのよう。
そこから、痛いほどに体中に伝わってくる。
彼の中にあるかなしみの感情は一体何なんだろう。
そして、彼の心は今、どこにあるのだろう。