僕の幸せは、星をめぐるように。


駐車場を抜け、木々に囲まれた道を抜け、その建物の入口にたどり着くと、

事務仕事中らしいネコさんのオブジェ×2に迎えられる。


思わず、眉間に皺を寄せながら、ブニャー! と威嚇してしまった。



屋内に入ると同時に、

懐かしいような涼げな空気がわたしを包み込んだ。


――あ、いた!


「おかーさん、今日暑すぎだし! 何でこんな日にこんな大切なもの忘れるのさ!」


わたしはその建物内で働いている中年女性――わたしの母に話しかけた。


「あはっ、ごめぇーん。助かるぅ」


すぐ目の前で、手を合わせウィンクをする母の姿に世代の差を感じながら、わたしは手にしていた紙袋を渡した。

要は、母がお弁当を家に忘れたので、わたしがパシリとして届けてやったのだ。



今日は日曜日。


観光客も多いようで、入り口奥の喫茶コーナーには、濁点が少ない言葉を話すおばさま軍団が見えた。


この建物はわたしの地元で一番有名な人の記念館であり、それにまつわる展示品がたくさん飾られている。


かくいうわたしは、幼稚園か小学校の時の遠足くらいでしか来たことはないけど。

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