僕の幸せは、星をめぐるように。


色々と落ち着いてから、ようやくわたしはユカチンといつも通りベランダでお昼ごはんを食べることができた。


「…………」


教室内外からざわざわとした話し声が聞こえる中、

ユカチンは無言で春雨スープをすすっている。


「あのぅ」


「…………」


わたしも体育座りをして、膝の上に載せたお弁当箱を開けた。

この前母にお茶漬けかけご飯を抗議したためか、今日は普通にご飯にのりたまがかかっていた。


「あたし、知らなかった。トシミが何でそんなに苦しんでだのか」


ユカチンは割りばしでスープのカップをつっつきながら、そうつぶやいた。


「あ、その」


「ごめん。そりゃ嫌な思い出とか、言いたくないの分かるし。あと、さっきぶっ倒れたばっかなのに。んだから先に謝っとく。ホントごめん。

……でも、寂しいもんなんですよ、友達が困ってるのにどこまで何をしたらいいのか分からないのは」


わたしの方を見ないまま、ユカチンは残りのスープをぐびっと飲んでいた。


「…………」


言わなくてごめん、という気持ちと、そう言ってもらえて嬉しい気持ちが混ざり、

のりたまご飯を食べようと思ったけど、喉の奥がつんと痛んだ。


そうだ、ユカチンはわたしの大切な友達だ。

ユカチンもそう思ってくれていたんだ。


嬉しくて、少し泣きそうだ。


「……ユカチンにも見て欲しかったな。この前のお弁当」


「はぇ?」


気の抜いた声を出しながら、

カップの奥にたまった具をはしでかきだしているユカチン。


そんな彼女に向けて、

「ふりかけ代わりにお茶漬けのもとをご飯にかけるの、どう思う?」

と聞くと、

「は? そんなんどーもないべや。むしろお茶漬けの旨味が凝縮されてご飯が美味しく食えるんでね? ちょっと味濃さそうだけど」

という答えが返ってきた。


「あははは! ありがとう! ユカチン大好き!」


そう言って私が笑うと、少し頬を赤らめながら、ユカチンは怪訝そうな表情を浮かべていた。


もうすぐこの町も梅雨が明けて、東北なのにカラッと暑く晴れる夏がやってくる。

< 71 / 317 >

この作品をシェア

pagetop