僕の幸せは、星をめぐるように。
☆ ★ ☆
「やっぱりクニオって天才だね!」
阿部くんはあははは、と笑い始めた。
ケツキックのことは話さなかったけど。
爆笑している阿部くんの目は、線のように細くなり、涙袋が浮かび上がっている。
ちょうど暗めのオレンジの光がわたしたちに差し込んでいて、彼の顔に綺麗な影を浮かび上がらせていた。
阿部くんはいつの間にかフェスTに着替えていて、
ちらっと見えた綺麗な鎖骨にもわたしはドキッとしていた。
「あ、阿部くんはさ、彼女とか作ったりしないの?」
わたしは、さっきユカチンに聞いたように、勢いのまま言葉を滑らせてみた。
近くにはわたしたちと同じように語り合っている人や、寝転がって音楽を楽しんでいる人など。
もちろんカップルらしき男女が一緒に音楽にノっている姿も見える。
阿部くんは胡坐をかいたまま両手の指をクロスさせ、軽くのびをしていたけど、
わたしの問いに対して、ん? と軽く反応した。
夕日の光とともに、今演奏中のセンチメンタルな曲がふわりとわたしたちに降り注ぐ。
ベースの低音が体の中に響き、答えを待つわたしの心を震えさせていた。
しかし――
「おれは今はそういうのいいかな。みんなとわいわいできて十分楽しいし」
阿部くんはそう言い、表情の無い顔でステージを眺めていた。
「そ、そーなんだ……」
さっきまで何の混じりけのない笑顔だったのに。
阿部くんが遠い。
そっか……。
やばい、喉の奥がつんとしてきた。
音楽が鳴り響く中、わたしは下を向く。
泣けてくるようなメロディとコードが心に重く響いてくる。