僕の幸せは、星をめぐるように。


「でも、あん中で手つなぐのって結構大変そうじゃん? 人でぎゅうぎゅうだし。こーんな……感じ?」

と、わたしは言いながら、阿部くんに肩をぶつけてみた。


軽く、わたしたちの手の甲は触れ合う。


ちょっとドキっとしたけど、

おっと、これは事故。事故。


「ライブ後だし2人の間に人がいるかもね。こうやって、からの~」


そう言って、阿部くんも、肘で人ごみをかき分ける真似をしながら、わたしに手を伸ばした。

花火が打ち上がる音と同時に、わたしの心臓の音も跳ね上がる。


阿部くんの手がわたしの指に触れた……

かと思いきや。


「クニオだし、緊張してスカってそうだよね。あはは」


わたしの指先を滑らせるように握った後、その手は空気をつかんでいた。

夜空に大輪が咲くとともに、カクっとわたしはずっこけそうになる。


って、何これ!


この花火のロマンチックなシチュエーションもあって、

阿部くんと触れるたびに少しずつドキドキが増していく。


楽しいんだけど、この微妙な手の距離がもどかしくもあった。



「いや、意外とヤツはやる時はキメる男なはず。直球勝負で! てい!」

とわたしは言って、再び阿部くんの左手に向かって右手を伸ばした。


しかし、彼の細くて綺麗な指にふれたとたん、再び心臓がドクンと大きく鳴り、わたしは思わず手をひっこめた。


わ、わたしは一体、何をしようとしているんだ?


テンパっているわたしに対して、


「ね。上手くいってるといいんだけどね」


と阿部くんはつぶやき、真剣な顔で空を見上げていた。


「うん……」


どんどん大きくなる鼓動に目の奥をつんとさせながら、わたしも視線を頭上に移した。


< 95 / 317 >

この作品をシェア

pagetop