君と願ったたった一つのもの
「で、なんだっけ」
「えっと…佐野先輩が私を避けてたのって…やっぱり、私と血が繋がってるって知ったから…」

向かい合わせに座る私たち。

佐野先輩は、いつみてもかっこいいと思った。

いや、佐野先輩ではないんだよね。

この目の前にいる人が、私のお兄ちゃんなんだよね…。

「ごめんね…オレも…頭の中混乱しててさ、しばらく避けてた。ごめん」
「そう、ですよね…」
「それで、オレの親に聞いてみたんだ…」
「…」
「そしたらやっぱりそうだって言われて、今まで気づかなかったよ」
「…」

そうだ。

一番辛いのは、私じゃない。

佐野先輩なんだ。

今まで一緒に暮らしてきた家族が。

みんな、自分と血の繋がってないなんて。

「でももう、いいんだ。気にしてない」
「…」
「それに今は、感謝の気持ちでいっぱいだよ。ここまでオレを育ててきてくれて」
「そうですか…」
「だからこれからも、今の家庭で頑張っていくつもりだし、妹も可愛がるよ」
「可愛がってあげてください」

なんだか淋しかった。

私が本当の妹なのにって、ヤキモチ焼いちゃった…。

「そうするよ。美来ちゃんはオレの本当の妹か。…でも、似てるね、オレたち」

佐野先輩はそう、笑って答えた。

「そうですね」
「オレさ、美来ちゃんからの告白、嬉しかったよ」
「え⁇」
「美来ちゃんからいつも、元気もらってた」
「そんな…」
「あの時返せなかった、返事さ。返してもいいかな」
「…はい…」
「…あのね」

佐野先輩はとっても笑顔でこう言った。

「こんな俺を、好きになってくれてどうもありがとう」

と。

その時私は笑って、涙を流した。
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