君と願ったたった一つのもの
大雨の中、一つの傘に二人入ることは難しい。
「ごめんね、美来ちゃん濡れちゃうね」
「いえ‼︎全然‼︎」
「って言ってもね…」
確かに少し濡れてしまった。
だけど私に比べたら佐野先輩は…。
「佐野先輩びちょびちょ…」
肩がびしょ濡れだった。
佐野先輩は優しいから、私の方に傘を傾けてくれてた。
「こんくらい、大丈夫だよ」
佐野先輩の優しさにも、私は惹かれました。
「あのっ、佐野先輩」
「なにー」
「私の家、寄って行ってくださいっ‼︎」
「え⁇」
「少し乾かして行った方が良いです」
「いやー、でも」
「私は全然大丈夫なんで‼︎」
「んー…だったら少しだけ…」
「はいっ‼︎」
この時はまだ知らない。
この事がきっかけで、最悪な出来事が…
いや、知らなければよかったことを
知ってしまうようになった…。