そこにいる
荒江が電話の相手との話が進むにつれ、
荒江の表情は、鼻息は荒いままだったが、
徐々に赤から青色へと変わっていった。
そうして、電話の相手と話しながらフラフラと2,3歩こちらへ近づいて僕たちを見た。
さきほどまで、ドスドスと屋上を破壊しそうな勢いで歩いていた荒江とは、別人のようだった。
多少僕たちに近づいたことで、荒江は電話の相手と何かトラブルがあった事だけは分かった。
しばらく会話をしていた荒江だったが、突然ジッと黙った。
その表情は真っ青で、額から大粒の汗がいくつも流れていた。
口元もかなり引きつり、ノドもカラカラな感じだった。
今までビビッていた僕でさえ、心配するほどの様子だ。
荒江の様子のおかしさに、シンも僕たちの後ろから顔を出して、荒江を観察した。
と、その時・・・
荒江は、電話を左耳にあてたまま、
目を飛び出させようとしているのではないかと思うほど、
目を大きくして、僕たちを凝視した。
この時僕は、あのいまいましい言葉を、荒江の口から聞くこととなる。