そこにいる
僕は一瞬、耳を疑った。

同時に僕は、このまま僕の脳裏にある、僕の筋書き通りの事が起こるとすれば、
このまま荒江を見るべきかどうか、ほんの一秒くらいの間にそんな迷いに悩まされた。



「・・カッ・・・ングッッ・・・・ガッッ・・・・・・」



荒江は、声とも言葉とも取れない音を発すると、鼻からツーーーーッッと鼻血を出した。



「あ・・先生鼻血・・・」



菜都が慌てて、自分の持ってきたポケットティッシュを差し出そうと立ち上がった。

が、次の瞬間には菜都の叫び声で、再び屋上全員が固まる事となる。




「きゃぁーーーーーーーーっっっっっ!!!」



荒江の両目からも、血がジトジトと溢れ出してきた。


菜都はせっかく持ったティッシュを地面に落とし、ガタガタと震える両手で口元を押さえた。



僕もシンも、その場でジッと『その事』の進行をただ見つめていた。

細かく言えば、あまりの恐怖に身体が動かず、そのまま見続けることしか出来なかったという方が、妥当かもしれない。


----カタンッッ・・カンッ・・・


----ガシャンッ・・・



荒江は、右手に持っていた竹刀と左手の携帯電話を、順に落とした。




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