そこにいる
----ズサッッ・・ドサッッ・・・・



そうしてすぐに、荒江自身の身体も、屋上のコンクリートの床の上に倒れ込み、そのまま動かなくなった。



僕も、菜都も、シンもあまりにも衝撃的な場面を目撃して、その場から動けないでいた。


すると、サッと僕たちの次に近くに居た男子生徒が、荒江の側まで駆け寄った。


彼は1人で本を読んでいたらしく、彼が元居た場所には分厚い本がページを開いたまま置かれていた。


学生服のネクタイを見ると、紺色の斜線の柄が2本ついていた。



『・・・2年生か・・・』



僕は、こんなパニックの時に、誰も近寄りたくない倒れた荒江に、たった1人勇敢に駆け寄っていった勇気ある男子を、尊敬の気持ちで見つめた。



「誰か!他の先生呼んできて!!」



駆け寄った2年の男子がそう叫ぶと、屋上の出入り口付近に居た生徒が、慌てて校舎の中へ走って行った。


彼は、倒れた荒江には触れずにいた。


荒江が落とした携帯電話にも目をやっていたが、荒江が落とした衝撃ですでに電池が本体の外に飛び出していた。



推理探偵のように、荒江の周りをグルグル回って、状況を観察する彼を見て、ようやく僕も荒江に近づく気になった。



「本当に・・・うわさ通りに死ぬモノなんだな・・・」



僕が近づいた際、その2年の男子は、そう独り言を呟いた。


その独り言に、僕は話しかけた。



「聞こえました?・・・最後の言葉・・・・」



2年男子は、チラッと僕を見たが、またすぐ荒江に視線を戻した。



「あぁ・・・・『そこにいる』ってゆーヤツね・・・」




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