そこにいる
次の朝、校門で菜都とバッタリ会った。



「おはよう・・・」


と、声をかけてきた菜都だったが、やはりどこか元気がなかった。

菜都も、まだ昨日のショックから立ち直っていないのだろう。

目の前で人が死んだんだ。

当然のことだ。

僕は、夜中に来たメールを返信していない事を思い出した。



「おはよう。・・昨日・・メールありがと・・・おススメのサイトにいってみたけど、接続がうまくいかなくてさぁ、そのまま寝ちゃったよ。」


菜都の頬が一瞬、ピクッとひきつったのを、僕は見逃さなかった。



「・・メール?・・・私・・メールなんて送ってないよ。・・誰かと間違えてるんじゃないの?」


菜都は、僕と目を合わせず早足で靴箱に向かっていた。


「えっ?そうなの?・・てっきり菜都だと思って・・・ごめん!んじゃ、カン違いだった。」


菜都の背中に、僕は笑ってみせた。

菜都は、特に振り返ることなく先に進んだ。


『・・なんか、怒らせちゃったかなぁ・・・』


他の子からメールもらってて、自分とカン違いされたらいい気はしないか・・・


早足で、先に校舎へと向かった菜都の姿は、僕からすっかり見えなくなった。

僕は僕で、マイペースで自分の教室へ向かった。


教室の隅で、シンは相変わらず女子に囲まれてキャーキャー騒がれていた。

シンはどんな時も、ペースは変わらないんだな・・と、改めて思った。


朝礼のチャイムが鳴った。


今日は、クラスの3人が、どうやら休みのようだ。

気候の変わり目か、風邪を引く人間も多いのかも・・・と、のんきに考えていた。


---ガラッ


教室の扉が開き、担任が入って来た。


出席簿を、教壇に置くとしんみょうな顔をして、クラス全員を見渡した。



「・・皆に・・・報告がある・・・。ちょっと・・・辛い報告になる・・・」


僕の心臓は、バクンッと激しく鼓動を打った。


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