そこにいる
気が付いたら、僕は弁当も持たずに屋上へ来ていた。

もちろん食欲など全く無いが、なんとなくきまりが悪かった。

小坂先輩は、屋上の入り口で突っ立て居る僕を、広げている分厚い本から一瞬だけ目を離し、チラッとだけ見た。

そしてまた、すぐに本に目を戻していた。

僕はなにげなく、小坂先輩の居る隣のベンチへ行き、座った。

何をするわけでもなく、ただ・・空を見た。

生徒が多く、屋上を利用する事もあり、屋上のベンチの上には、日よけの為のテントのような屋根が貼ってあった。

僕は、その隙間から青空を見ていた。

雲が高くて、真っ青な空だ。

誰が、死のうと、生きようと・・・この空だけは変わらずに、自分のペースで僕たちを眺めている。


「キミのクラスの3名・・・首に『偽』の文字が浮かんでたって。」


本に目を向けたまま、小坂先輩が突然言葉を発した。

あまりに突然だったので、僕は驚いて立ち上がった。



「はっっ・・・はいっ?!」


しかも、小坂先輩の喋った内容は、ゲーム参加者には、とてもリスキーな発言だ。

僕は、小坂先輩はゲームの参加者ではないのかも・・と、思った。

毎日毎日、人が変死しているのに、あまり話題に上らないのも、皆、自分が参加者だとバレたくないせいだ。

なのに、この人は、平気な顔でその内容を語っている。



「その3人が亡くなった夜中の0時、3人一緒に居たそうだ。」


「ど・・・どうしてそんな事・・・知ってるんですか・・?」


どこでそんな情報を仕入れてくるんだろう・・・この人。

小坂先輩は、本にしおりを差し込むと、ようやく僕の方に身体を向けた。


「僕の父は、刑事なんだ・・・な~んて、ありふれた推理マンガの反応期待した?」


いや・・全然、思いつきませんでした。


「小坂先輩は・・・昨日・・あんな事があったのに、よく・・此処に来ましたね・・・いやっっ、ヘンな意味じゃなくて・・・昨日も・・勇気あるな・・・って・・・尊敬の意味で・・・」


僕は、喋り馴れていないせいもあり、完全にカミまくった。支離滅裂!


「別に・・・勇気・・・ってのじゃナイけど・・・・」


「はぁ・・・」


< 29 / 88 >

この作品をシェア

pagetop