そこにいる
「終礼前に、化学準備室の先生の所に、次の日の準備道具とかの確認に、当番の僕が確認に行ったんだ。

その帰りの渡り廊下で、キミのクラスメイトがヒソヒソ話しているのを聞いたんだ。」


「・・どうしてクラスメイトって分かるんですか?」


「だって、昨日一緒に居たでしょ。あの高杉って、荒江が亡くなる前に探し回ってた生徒。」


「えっっ・・・シン・・の事ですか・・・?!」


「そう、あの茶髪の。」


「それで、ヒソヒソ話しって・・誰とですか?」


「今日亡くなったって聞いたうちの1人、中山って女子。」


「とにかくその女子が泣きじゃくるから、彼・・高杉君は一生懸命なだめてたよ。

僕は始め痴話ゲンカかと思って、治まるのを柱の影でじっと待ってたんだ。

何も立ち聞きするつもりじゃなかったんだよ。」


僕の知っているシンは、女子を泣かすようなヘタこく男じゃない。

中山が泣いていたとなると、別件で何かあって、シンが慰めていたとしか思えない。


「でも・・・どこで痴話ゲンカじゃないって分かったんですか?」


「『私も間に合わないかもしれない・・・』って女子が言って、

それに対して高杉くん?!が、『意味はよく分からないけど、あきらめちゃダメだよ』って・・・

それを言って、高杉君は、すぐに女子に背を向けたんだけど、女子は彼の手を握って引き留めて・・・それからこう言ったんだ・・・

『今夜が49日なんだ』って。」


僕の身体からは血の気というものが、完全に引いていた。

小坂先輩が、ゲームの事を知っていてこの事を話したのなら、かなりの度胸だと思った。


「・・・で、シンは・・何て・・・」


「あぁ・・彼は・・・

『中山チャン・・49日で、この世をさまよっていた人たちは、あの世へ行って、幸せに過ごすんだ。心からの冥福を祈ろうよ』・・・だって。

だから僕は、てっきり、その中山って女子の身内の誰かの49日に、なんかの事情で彼女が出られない事を、高杉君にぶつけてたんだと思ったんだ。

その後、すぐに彼は去ったんだけどね。」


「そんな事があったんですか・・・」


やっぱり、小坂先輩はゲームの参加者とは違う・・・?!

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