そこにいる
僕は、どんでん返しがくるのではないかとハラハラした。

味方とみせかけておいて、実は僕を罠に陥れようとしていたのでは・・と、バクバクだった。


「そんな事は、既に科学で証明されているよ。」


「そんな事って・・・」


「恐らく『そこにいる』っていう言葉は、きっと使ってはいけない言葉だ。

それをうっかり使ってしまうと死ぬ事につながるんだよ。」


ってことは、『そこにいる』は、ルールの中にあったNGワードか・・・


「そうなんですね・・・」


「それから、声だけでガラスが割れるの知ってる?」


「何の声ですか?」


「人の声だよ。」


「人の?」


「そう。すべての物には波長があってね、たとえばガラスのコップをチンとならして、その音と、全く同じ周波数の声を出せば、ガラスは共鳴して、一瞬で割れてしまう。

それも粉々にね。」


「そんな事・・出来るんですか・・・」


「音響に詳しい人間なら、そんな事はいとも簡単に出来るさ。

電話もそう。プッシュ回線の場合、0から9までの番号は、それぞれ2音組み合わせた音で成り立っている。

この音の周波数を持つ声の人間2人で完璧な絶対音感を持ち、それをハモれば、電話番号を押す事なく、声だけで、かけたい番号にかける事が出来るんだ。」


「へぇ・・・・」


「脳がグチャグチャになるのも、それと同じ仕組みさ。

脳が共鳴する周波数をきっと犯人は知っている。

そして、それを電話口にあてて、相手の耳にその周波数を聞かせるんだ。

きっと、一瞬で脳は破裂さ。」


こんなグロテスクな話しを、淡々と話してのける先輩は、やっぱり変人に見えた。


「じゃぁ・・最近の、この変死は・・つまり・・殺人って・・事ですか・・・?」


「きっと犯人はこの町のどこかにいる。

・・・キミも呪いとかそんなのって思ってた?」


「いえ・・・僕は・・・」


「犯人にとって、これは・・ただのゲームだ!

きっと、僕がシッポを掴んでみせる。」


「それって、その見解を警察に話したらどうですか?

今の話しならきっと、真面目に聞いてもらえますよ。」

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