そこにいる
「・・・だといいけどね。

警察も・・毎日毎日、沢山の人が死んで・・現場検証やら何やらで人手不足さ。

そんな時になおさら、こんな高校生の推理なんて、聞いてもらえないんだよねぇ・・・」


小坂先輩は、少し寂しそうに空を見た。

でも、僕も小坂先輩のおかげで少し勇気が湧いてきた。

どこかに犯人がいる。

捕まえれば、皆が助かる。

その希望が、ほんの少し僕を明るくした。


昼休みが終わる頃、教室に戻った僕はシンを見た。

僕は小坂先輩のおかげで、落ち着きを取り戻す事が出来、シンに配慮する余裕も出来た。

女子の取り巻きの中で、シンは窓の外をジッと見ていた。

何かを見つめているでもなく、ただ遠い所を見ていた。

シンは、知ってて中山を突き放したのだろうか。

本当に知らなくて、困って去ったのだろうか。

いずれにしても、助けを求めていた相手が、その日のうちに亡くなったら・・・

誰でも落ち込むか・・・


僕は、放課後も、それから次の日の朝もシンにいつも通りの態度で接した。

昨夜は、菜都に珍しく僕からメールをしたが、結局返事は来なかった。

よほど具合が悪いのか・・・



----ブーッッ・・ブーッッ・・ブーッッ・・


ポケットに入れておいたケータイのバイブだ。

僕はすぐに発信者を確認した。


また、ディスプレイに『N』の文字。

僕はケータイを持ち、トイレまで走って行った。


トイレの付近で、誰も居ないのを確認して、僕は電話に出た。



「ハァ・・・ハァ・・も・・もしもし・・・」


「本日の敗者のご報告です。

本日の敗者13名。勝者は残念ながら本日もいらっしゃいませんでした。

では、ゲーム参加2日目頑張ってください。」


電話の相手の男は、事務的に話すと一方的に電話を切ろうとした。

もしかしたら、一斉に録音テープで、ゲームの参加者全員に同じモノを流しているのかもしれない。

ゲーム開始何日目という所だけ、個人に合わせて変える事が出来るのかもしれない。


だけど・・僕は声を発せずにはいられなかった。



「ちょっと、待ってよ!!」



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