そこにいる
「今の世の中・・本当に恐ろしい。

普通の人間のふりをして平気で悪い事をする。

いわば、偽善者の多いこと。

ほんの1%の『善』であとの99%の『悪』を行っても、のうのうと生きているのですから。

そうして、神様にほんのちょっと懺悔して終わり。

そうして、また同じ事を繰り返す。

そんな輩が野放しになっているこの社会で、あなたは本当に平和に生きられるとお思いですか?

上辺だけはいい人の振り・・しかし腹の底では、どんな恐ろしい事を考えているか分からない。

怖いですねぇ・・・人間とは・・・。」



「じゃぁ・・も・・もしかして・・亡くなった人の首筋にある・・『偽』の文字は・・・」


「えぇ、『偽善者』の烙印を押させて頂いてます。・・それがなにか?」


それで・・『偽』・・・・


「と・・・とにかく・・そちらのやっている事は間違ってます。

今すぐ全員をゲームから解放するべきです。」


「それは出来ません。これは、ゲームという名の天災なのです。」


「天災・・・?」


「はい。

例えばあなたは、いつ何処に地震が起きるか分かりますか?

雷が落ちるか分かりますか?

それと同じです。

あなたが望もうと、望むまいと、地震を止める事は出来ない。

雷が落ちるのを防ぐことは出来ない。

例え避雷針を使っても、落ちるという動作を止める事は出来ませんよね。

このゲームもそうです。

一度触れれば、二度と引き返す事は出来ません。

もちろん、途中で抜ける事もです。

でも、ただクリアすれば良いのです。

なにがそんなに難しいのでしょうか。

私にはそれが理解出来ません。」


電話口で、男は困ったように溜め息をついた。


「実際に人が死んでいるっっ!!なんとかしろよ!!」


僕は、迫力が無い事は分かっていながらも怒鳴ってみた。


「そんなに興奮なさらないで・・まぁ、落ち着いて下さい。」


「落ち着いていられるか!!」


「もしかして・・あなた・・自信がなくて、このようなクレームをおっしゃっているのですか?」


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