そこにいる
「おーーーーーい、菜都やぁーーーーい!!」


僕とシンは色んな呼び方で試してみたが、菜都が出てくる気配は一向になかった。

道行く人も、大声で叫ぶ僕らを、怪訝な顔をしながら通り過ぎた。

僕たちが、あまりにも大声で呼び続けるので、耐えかねて、近所の人が家から出てきた。


「あなたたち、菜都ちゃんのお友達?」


頭にカッチリパーマをかけたおばちゃんが、僕らに話しかけてきた。



「はい。菜都の様子・・分かりますか?」



おばちゃんは、一瞬困った風な顔を見せたが、こう答えた。



「菜都ちゃんのご両親・・5日前に同時に亡くなってねぇ・・・。」


「えっ・・・5日前ですか?」



菜都が具合が悪いと言って、先に帰った日だ。



「なんでも・・・ご両親・・例の変死だとかで・・・」



・・・て、事は菜都の親も、あのゲームの・・・参加者!



「で・・菜都は・・・・」



シンが尋ねてくれた。



「しばらくはねぇ・・・かなり泣きわめいていたから、病院にね・・・3日ほど居たんだけど・・。

病院もねぇ・・・そんなにいつまでも構っていられないでしょう?

最近、あぁいった変死多いし・・・。

で、家に帰されてねぇ・・・

今度はショックで口も聞けない状態みたいなのよ。

私も心配で、時々様子を見に行くんだけどね。

部屋に閉じこもって、出て来ないのよ。

物音はするから、なんとか生きてるみたいなんだけど・・・他の親戚の方たちも、会わないまま帰らされるみたいなのよ・・・

なんとかしてあげたいんだけどねぇ・・・」



おばちゃんは、心配そうに菜都の事を話してくれた。

僕には、菜都の気持ちが分かった。

両親さへも、亡くなり、気持ちの支えがなくなった今。

恐らく、菜都のゲームのタイムリミットが近づく中で、誰1人として信じられない。

信じて受け入れたが最後、いつ足をすくわれるか分からない。

でも、善人であるために人を裏切るような行為も出来ない。

結局は、人と会わない事が最善の道だ。
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