そこにいる
その言葉を聞いて、シンは血相を変えた。

僕は、小坂先輩から聞いていた話を思い出していた。

もし、小坂先輩の話の通りなら、今の菜都の発言は、間もなく菜都自身の『死』を意味していると取れる。


---ドンドンドンッッッ!!


「菜都ぅ!

これ以上オレたちをないがしろにしたら、これから毎日菜都と悠吾のランチデートの邪魔してやるからな!!

それでもいいのか?!」



「・・・・もう・・無理なんだよ!!

無理!!

誰も信じられない!!」



菜都の声から、恐怖と悲しみが同時に放たれているようだった。


助けてもらいたい切なさと、裏切られる時の恐怖とのはざまで、菜都は今、きっと・・・揺れている。



「悠吾!・・・どいて!」



シンがドアに向かって体当たりを見せた。



--- ドンッッ!!・・・・ドカッッッ!!


シンが2回体当たりをした。

3度目にシンが、ドアに向かって体当たりをした時、同時に僕も体当たりをした。



--- バアアアンッッ!!


ようやく、菜都の部屋のドアを破る事に成功した。


部屋の中には、怯え、やつれ、小さくうずくまっている菜都が居た。


そうして、その首筋にはうっすらと『偽』の文字が浮かんできていた。



「菜都・・・・」



『やっぱり・・・』


僕は、菜都の首筋に浮かんでいる文字を見て、やはり菜都もゲームの参加者である事を認識した。

この首筋の文字を誰かに見られるという事は、自分でゲームの参加者だと告白している事と変わらない。 

しかし、この文字が現れたという事は、いずれにせよもう『負け』が目の前にあるという事だ。


結局、死から免れる事がかなり難しい状況だ。

僕は、小刻みに震える、菜都の手を取った。




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