そこにいる
「僕たちが来たから・・・もう心配ないよ・・」
そう声をかけると、菜都はワッと泣き出した。
「私・・怖くて・・・ケータイ・・・電源切ってるのに・・・切ってるのに・・・・」
菜都の言いたい事が、僕には分かった。
恐らく、毎日あのいまいましい報告がかかってきているのだろう。
しかし、電源を切ったケータイまで操れるなんて、犯人はかなりの技術者だと思った。
「ケータイどこ?」
僕がケータイの場所を尋ねると、菜都は幾重にも重ねたクッションの下を指さした。
僕は、クッションを跳ねのけ、そのままケータイを、バンッと廊下の壁に投げつけた。
ケータイからは電池が飛び出し、本体もかなりクタッとなった。
これで機能停止だろう・・・
『かけてこれるものなら、かけてこい』
と、その時僕のケータイが鳴った。
--- ブーーーーッッ・・ブーーーーッッ・・・
ケータイのバイブ音に、菜都は異常に反応した。
「い・・いやぁああああっっっ!!」
菜都の顔が恐怖に歪んだ。
僕は、ケータイのディスプレイを確認した。
そこには『N』の文字。
僕は廊下に出た。
そして次に、電話を取った。
「もしもし・・・・」