そこにいる
テレビに映っている男は、シーズンなどとっくに終わったグレーのコートに、真っ黒な深い帽子を顔にすっぽりと被って、顔は全く見えなかった。


小坂先輩は、犯人は必ず居る。しっぽをつかんでみせると言っていた。

確かにこうやって、僕は視覚で、このゲームの恐らく主催者を目の当たりにしている。

しかし、この男は・・・あまりに危険すぎる・・・

そんな気がした。


「本日、初の勝者が現れました。

皆さんにとっても、大変朗報です。

わたくしも、大変嬉しく思います。

勝者の方に、是非拍手を送ってください。

それと、本日の敗者は20名です。残念でした。

本日報告のプレーヤーの中で、アナタと直接面識のある方お1人。

このゲーム始まって以来の勝者がアナタと面識のある方です。

では・・明日の予定です・・・・。」


僕は、必死で考えた。

僕の知り得る中で、勝ちそうな人間。勝てそうな人間。

『小坂先輩?』

あの鋭い洞察力と行動力のある先輩なら・・きっとこのゲームをなんなくクリアしたのではないか・・そう思った。

やはり僕にはうまく言って、参加者であることをバレないようにしていたんだ。

テレビの男は、僕の思考の速度に合わせる事無く、話し続けた。


「ちなみに、携帯電話が壊れても、今の世の中電波の届かない所などほとんどありませんからご安心下さい。

携帯が無ければテレビ、ラジオ、無線・・・他の手段はいくらでもございますからね。

ゲームをお休みする必要はございません。

では・・」


一方的に消えようとするテレビに向かって、僕は叫んだ。


「待って!!

アナタは誰ですか!!

何のためにこんな事をするんですか。

しかも、3人同時に居る所でこんなカタチで出てきたって事は、ゲームに参加している事がバレてもいいって事じゃないか!!」


僕はもう、ヤケクソになっていた。



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