そこにいる
このゲームで、何をしたら勝ちで何をしたら負けなのか、すでにあべこべになっていた。



「はい・・。

基本的にはバレないようにしないと『負け』ですが・・・・今回の配慮は特別です。

私は自分で言うのもなんですが、人に対して、とても『優しい』とつくづく思っています。」


「は?!なに言ってるの・・・」


自分で自分の事を優しいというこの男に、僕は嫌悪感でいっぱいになっていた。



「なぜなら、今までの敗者の方から『大切なモノ』を頂いておりますが、私はいつも、最も大切なモノは、極力最後まで頂かない事にしております。

ほら・・・始めに皆さんにアンケートに答えて頂きましたね。

大切なモノから順に番号をつけて頂きました。

私は、皆さんが1番大切であると記入されているモノには、手を付けておりません。

ほとんどの方が、ご自分自身を4番・・即ち大切なモノの順位付けで『一番下』に置かれますので、その順番通りにルールが作用しているだけなのです。」



「じゃぁ・・アノ時から・・・ゲームに参加してた・・ってコト・・・?」



「そうです。

そちらの女性は、今夜0時を過ぎると、丸49日です。

まだ、このゲームに参加させるプレーヤーを見つけていませんね。

0時を過ぎると、負けになりますよ。

では・・健闘をお祈り申し上げます。」


そう言うと、テレビは何事も無かったかのように静かになった。

僕は、菜都とシンを見た。



「言わされる・・・言わされるんだ・・・あの言葉・・・」



菜都の怯えるその言葉とは、亡くなる際に必ず皆が口にする言葉。



『そこにいる・・』



僕も、どうやってこのNGワードを皆が言うのか不思議でならなかった。


シンは、菜都の隣でずっと黙っていた。

シンが眉間にシワを寄せて、何か考え込んでいる。

こんなおちゃらけていないシンを見るコトは、今まで殆ど無い。

あの男が平気で僕たちの前に姿を現したというコトは、恐らくここに居る全員が、ゲームの参加者だと思えたが、シンはずっと口を閉ざしている。




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