そこにいる
先輩の部屋へ一歩入ると、壁一面本の山だった。


「うわっっ!」


僕は、本の城壁に圧倒された。


「この部屋を見た人は、必ず一言そう言うよ。」


案の定、僕の行動なんか、小坂先輩には既にお見通しのようだ。


「・・・で、僕に相談でも?」


先輩は小綺麗にしている、ブルーのカーペットの上にペタッと座り、その先輩の正面に僕を座らせた。


「あ・・はい・・・」


とりあえず、来てはみたものの・・どういうカタチで先輩の知恵を借りたら良いのか、僕なりに一生懸命ひねり出した。


「例の事件のコトでしょ!」


さすが先輩は鋭い!!

・・・って、僕と先輩との接点って、ソコだけだから・・それは分かって当然か・・・


とその時、先輩の後方に飾ってある一枚の写真に僕は茫然自失となった。

先輩の勉強机の正面の壁に、恐らく中学時代の写真が大事そうに貼ってあった。


写真は4人で写っていた。

小坂先輩と、あと知らない男女と・・・まだ今よりあどけない・・菜都と・・・



「あの・・・小坂先輩・・・あの写真・・・・」



僕の言葉に、先輩は一瞬振り返って写真をチラッと見た。



「ああ!僕が中3の時に所属していた、読書部の全員で撮った写真だよ」


菜都が・・読書部・・?・・全然知らなかった。

この前、荒江の事件の後、小坂先輩の事を話す時も、そんなに近しい間柄だった事は一言も言っていなかった。


・・・なぜ?


僕の迷宮の沈黙を破ったのは小坂先輩だった。



「キミは、城崎さんと付き合ってるの?」


先輩は笑みを浮かべながら、僕を見た。

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