そこにいる
「僕は、さっきまで菜都と一緒でした。

彼女と居て分かった事は、とりあえず、今夜0時までに悪い人間を2人捜さなければならないという事です。」


「・・・悪い人間?」


先輩は首を傾げた。


「はい・・・」


僕は、そんな先輩をジッと見た。


「それで・・・悪い人間を例の犯人に差し出せば、彼女は助かるわけ?」


「おそらく・・そういう事らしいです。

でも、最近この町では事件が多くて哀しんでる人や、平和を願う人が多いんで、なかなか悪人なんて見つからないし・・・

正直・・いくら悪人って言っても・・あんな変死をさせる奴に売るなんて・・良心が痛むっていうか・・・」


「キミ・・バカじゃないの?」


小坂先輩の突然の罵倒に、僕は絶句した。


「善人がいるのなら、悪人を見つける事くらい簡単だよ。」


「そうなんですか?!」


先輩の『簡単』という言葉に、僕はさっきの言葉のショックが吹っ飛んだ。

そうして、やはりゲームの勝者とは、やはり先輩だったのだという思いがことさら強くなった。


「物事の善悪というのは、どうやって判断する?」


先輩の問いに僕は、必死で頭をフル回転させた。


「やっていい事と、悪い事の判断くらい・・フツーに頭が判別する・・っていうか・・・」


「そうだね。

それは、生まれてから成長する過程で、周りの大人や共に育った人たちとの環境の中で形成されるモノだよね。」


「そうですね・・・」


「つまり・・・人の『善』とは、相手が心地よく感じること、温かく感じる事、生きてて良かったと希望が持てる事・・・そういった癒し的な分野を担当するのが『善』だとするよね。」


「じゃあ、それに対して『悪』は・・・相手が嫌がる事、冷たく感じる事、死んでしまいたいほどの希望を失う事・・・的なカンジですか?」



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