そこにいる
「まぁ、そういう事だね。

ただし、ここで厄介なのは『善と悪』に対して『正か負』かという事が絡んでくる。

たとえ相手が心地良いと感じても、それが法的に違反していれば、それは『悪』となる。

コレには善の思いに対して『負』が絡んでいる。

相手がどんなに心地悪く感じても、それがその人の為だという思いが強ければ『善』だ。

ここには『正』が絡む。

常に善悪は、一方向だけでは無いということだ。

これが世の中の倫理ってヤツさ。」



僕の頭は、パンパンに膨れ上がったポップコーンが破裂しそうな位、今までにナイほどの思考力を使いまくっていた。



「・・・で、まとめてもらえると・・助かります・・」



僕の脳みそは明らかに今、リング上で白タオルを投げた状態だった。



「要は、『善』を行える人間は『悪』を知っているってことさ。」


「・・・・?!」


「人は無意識の中で、『善』と『悪』を対比させて、それが良いことか悪いことかを判断しているんだ。

良いことをするためには、何が悪い事であるかを知ってなきゃならない。

悪い事を基本にして、人は何が良い事かを常に思考するんだ。」


「・・・て事は、誰の中にも『悪』が存在する・・ってコト・・ですか?」


「そうだよ。

キミの話しによれば、例の犯人は『悪人』と言っていたんだよね。

決して『犯罪者』とは言っていないよね。」



「善人の顔と悪人の顔は、誰の中にも存在する。

その対比がなければ、人は全うな社会生活というのをおくれないからね。

ただ、善と悪、どちらを軸に生きていくか・・・人は常にそのどちらかを自分の中で選びながら生きているのさ。」



< 57 / 88 >

この作品をシェア

pagetop