そこにいる
僕が、菜都の家へ戻ると菜都は相変わらずうなだれていた。

シンはその横で、彼なりの明るいペースで菜都を励ましていた。


「おかえり・・なんか、収穫あった?」


「うん・・・菜都、とりあえず誰でもいいからまだゲームに参加していなさそうな人を2人捜して、参加してもらう事にしようよ。」


「・・・誰でもいいって・・どうして?」


「・・また、後で説明するけど『悪人』っていうのは僕たちを混乱させる為の、ヤツの作戦だったみたいなんだ。」


シンは、ゲームの話しになるとまた黙りだした。


「でも・・・こんなゲームになんて・・私・・知ってる人を参加させられないよ・・・」


菜都は、両手で頭を抱え込み、髪をクシャッと握った。


「とりあえず、菜都には時間が無いんだ・・・

他の参加者たちはまた、あとでまた方法を考えたらいいよ・・シン・・・

・・シンも・・誰か・・参加出来る人・・知らない?」


僕は、初めてシンに振った。


一瞬、シンの時間が止まったようだった。

シンは僕に合わせていた目を、スッと反らすとこう言った。


「知らない事はないけど・・・」


そこで、言葉が途切れた。



「・・・けど?」


僕は続きを求めた。



「ちょっと・・・考えさせて・・・・」


「緊急事態だよ!そんな・・・考えてる時間なんて・・・」


シンは唇を閉じた。

その隣で菜都は目を潤ませている。


「もういいよ・・・私の事なんか・・・

放っといてくれたらいい・・・

もう・・限界だよ・・・こんなの・・・・」

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