そこにいる
「はいはい。分かっております。
私たち『図書部』のモットーは、一人でも多くの学生に図書を読んでもらうべく、活動するグループであります。」
城崎菜都は警察官のように額に手を当ててみせた。
「分かってるんなら・・・じゃぁ、この前の君のテーマにしてた本『エロスとプラトニックの天秤』につていのレポ、見せて。」
「あ~・・はいはい。モチロン出来てます♪今見せますね!」
城崎菜都はゴソゴソと学生カバンの中を漁った。
「あ~それから先輩!」
「なに?」
「私の事!・・キミじゃなくて『菜都』って読んでくださいよぉ!」
「・・そう。ダメなんだ。」
小坂は相変わらず本に目を向けたまま答えた。
「ダメですよ!他の図書部のみんなは私の事菜都って呼んでくれてるんですから、先輩も合わせてくださいよぉ。」
菜都は、まだカバンの中を漁りながら上目づかいに小坂を見て言った。
「図書部・・・って言っても、僕と君を合わせて全部で4人だけしか居ないんだけど・・・」
「でも、事実他の方は私の事を『菜都』と親しく呼んで下さってます!」
菜都はようやく探り当てた一枚の紙をカバンから引っ張り出し、小坂へ渡した。