そこにいる
「えっ、どうしてですか?・・結構自信あったんですけど・・・」
小坂はため息雑じりに答えた。
「どうしてか?・・・ソレ完全にネタバレじゃないか。これから読もうとする読者の気持ちを一気に踏みにじった内容だよ。それと、なぜ僕がプラトニックの代表的人間になってるの?」
「それは・・・その・・小坂先輩の名前を出した方が、3年女子が飛びつくかなぁ~・・・と思って。・・これも新たな分野の本に興味を持ってもらうための『誘い水』と言うか・・・結果よければ!・・みたいな・・・」
菜都は相変わらず頬を赤く染めたまま、モジモジと意見を言った。
「却下。」
「えぇ~!」
不満気な声を出しながらも、菜都の顔はにこやかだった。
何故ならこのようなやりとりは、菜都にとって日常であった。
このような態度で菜都に接するのが小坂であり、このクールさが菜都には魅力的だった。
学年一の美少女と言われ、1年の頃からちやほやしてくる男子に、菜都はへきえきしていた。
2年に上がり、放課後の図書室に小坂を見つけて以来菜都は小坂の虜になっていた。
端正な顔立ちに大人びた声。
菜都が日本の歴史を調べるため、参考にする本をどれにしようか迷っていた時、偶然図書室に居合わせた小坂にアドバイスを受けたのが出会いのきっかけだった。
「やり直しですかぁ?」
菜都は甘えた声で小坂に尋ねた。