たかしと父さん
結局、この物語は僕が主役であったのか、彼女が主役だったのか定かではない。ただ、稀代の美少女「さら」と平凡な「たかし」の少しゆがんだ物語は、このように連続再生されるように作られていたのだろう。悪趣味な誰かがそれを見るためにそうしたのか、時間の糸がもつれて偶然そうなったのかは定かではない。でも、不思議とそれらを恨む感情は湧いてこなかった。エンディングはずっと昔に終わっていて、何代目かもわからない僕「たかし」と彼女「さら」はもう一度主役を張るには歳を取りすぎていた。なにより、もうドラマティックな運命はこりごりだ。別に誰かを笑わせたり泣かせるために存在する理由もないし、これまでにそうした『役割』は充分果たしてきただろう。そもそも、淡々と二人で歳を取っていくことの何が悪い!・・・そう考えながらも、たまーにいたずら心で義理の息子の「たかし」に葉書なんぞ送ってみる。彼も本当のことが分かっている頃だろう。もう、会わない方が良い。

「たかしー!こっちきてー!!」

沙良が呼んでいる。40近くなって気付いたけど、彼女は若く見られることに異様な執着を持っているようだ。

「ねえ、沙良。」

自分で呼んでおいて沙良は怪訝そうな顔で僕を見る。

「なんでそんなに若く見られたがるの?」

沙良は呆れたような顔をしている。そんなまずいこと言っただろうか。

「罪滅ぼしよ!!つ・み・ほ・ろ・ぼ・し!!」
「え、意外。何の?」

よほどバカなことを言ったのか、だいぶバカにした目で見られている。

「高志の事、18年も放っておいたのよ!?18年分は若く見えないと高志が損するじゃない!!」

ああ、わかった。こいつがバカなんだ。

「ありがとう、愛してるよ。」
「へ?・・・ああ、ありがとう、愛してるよ!もっちろん!」

そうそう、何が言いたいかというとこっから先を誰かに見せる義理もないってことだ。さよなら、読者諸君。ありがとう、愛して・・・はないなw
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