たかしと父さん
高木沙良の章
長い夢を見ていた。タクシーに揺られている。
「先生?着きましたよ?」
篠宮さらに揺り起こされたようだ。夢の中では、まるで私は篠宮さんの未来をすべて生きたようなそんな奇妙な設定だった。確かに、彼女のような劇的な人生を送れたらと考えたことはあるが、彼女の弱り切った心臓を考えると、決してそれは口に出すべきでも、思うべきでもない。私は今日、彼女の心臓を、彼女の人生の晴れの日を守るために来たのだ。
「先生・・・お父さんの事、好きですね?」
式場の控室に入る前にそう指摘された。
「なんで・・・そう思うの?」
私は「我ながら無駄なことを言うなあ」と思った。37歳、独身、恋人いない歴が年齢と一緒、恋愛下手の私が上手く想いを隠して立ち回れるわけがないのだ。
「・・・見ればわかるのよね?」
「はい!」
篠宮さらは楽しそうに笑った。
「お父さん、お母さんが死んでからずっと一人なんです。私のために・・・ずーっと一人なんです。だから、本当は私が結婚しちゃうとお父さんが一人になっちゃうんです。」
「はあ・・・」
篠宮は笑った。
「でも、先生がいるから私、結婚できるんです!お父さんをよろしくお願いしますね!」
「えっ・・・えーっ!」
私はこれまでお父さんをよろしくしたことも、なんなら男性によろしくしたことも、よろしくされたこともないんだよ!?もう37歳だよ!?・・・と言うわけにもいかず、しおらしく。
「・・・はい。」
と答えてしまった。どうすればいいんだろう。具体的に何すればいいんだろう?結婚式のドタバタが終わると、篠宮父がやってきた。
「ウチの娘がとうとう新田さらになっちゃいましたね。」
先ほどの娘の父親押しつけ発言があるので、少々、緊張する。
「所で、ウチの娘から『高木先生が何か用事があるみたい』って言ってたんですが、何かありました?」
そう、私に語りかける父上に完全にやられている。私が篠宮高志氏に最初に会ったのは新生児室のガラス越しに今日嫁いだ「さら」ちゃんを見つめている時だった。それ以来、長い長い片想いをしている。
「あの・・・長い長い・・・」
「はい?」
篠宮氏が私の目を覗き込む。
「長い長い夢を見ておりました。・・・今もです。」
「先生?着きましたよ?」
篠宮さらに揺り起こされたようだ。夢の中では、まるで私は篠宮さんの未来をすべて生きたようなそんな奇妙な設定だった。確かに、彼女のような劇的な人生を送れたらと考えたことはあるが、彼女の弱り切った心臓を考えると、決してそれは口に出すべきでも、思うべきでもない。私は今日、彼女の心臓を、彼女の人生の晴れの日を守るために来たのだ。
「先生・・・お父さんの事、好きですね?」
式場の控室に入る前にそう指摘された。
「なんで・・・そう思うの?」
私は「我ながら無駄なことを言うなあ」と思った。37歳、独身、恋人いない歴が年齢と一緒、恋愛下手の私が上手く想いを隠して立ち回れるわけがないのだ。
「・・・見ればわかるのよね?」
「はい!」
篠宮さらは楽しそうに笑った。
「お父さん、お母さんが死んでからずっと一人なんです。私のために・・・ずーっと一人なんです。だから、本当は私が結婚しちゃうとお父さんが一人になっちゃうんです。」
「はあ・・・」
篠宮は笑った。
「でも、先生がいるから私、結婚できるんです!お父さんをよろしくお願いしますね!」
「えっ・・・えーっ!」
私はこれまでお父さんをよろしくしたことも、なんなら男性によろしくしたことも、よろしくされたこともないんだよ!?もう37歳だよ!?・・・と言うわけにもいかず、しおらしく。
「・・・はい。」
と答えてしまった。どうすればいいんだろう。具体的に何すればいいんだろう?結婚式のドタバタが終わると、篠宮父がやってきた。
「ウチの娘がとうとう新田さらになっちゃいましたね。」
先ほどの娘の父親押しつけ発言があるので、少々、緊張する。
「所で、ウチの娘から『高木先生が何か用事があるみたい』って言ってたんですが、何かありました?」
そう、私に語りかける父上に完全にやられている。私が篠宮高志氏に最初に会ったのは新生児室のガラス越しに今日嫁いだ「さら」ちゃんを見つめている時だった。それ以来、長い長い片想いをしている。
「あの・・・長い長い・・・」
「はい?」
篠宮氏が私の目を覗き込む。
「長い長い夢を見ておりました。・・・今もです。」