たかしと父さん
観測者の章2
本来一度決着したはずの物語を、解いて、再び編みなおす必要はなかった。しかし、敢えてそれを決行したのは小さな反乱があったからだ。誰の妄想も関わらなかった綺麗な世界を、破壊して「外」から理解できるように作り替えなければならないと感じたのだ。お察しの通り、この物語は本来決して終わることは無かった。しかし、この「時間の奇妙に閉じた街」の常識はあまりにも常識すぎて外界と辻褄が合わなくなっていった。結果、その内外で生じるギャップが揺れ戻す形で「小さな反乱」を起こし、「外」でも通用する辻褄を求めることで収束を図ったのだ。しかし、「外」から求められる辻褄が果たして本当に正しい要求であったのか。なんとなく一度ハッピーエンドを迎えたかのように見せた物語を痛みを伴う形に変える必要があったのか甚だ疑問だ。だから私は、観察者として虚構を続けていこう。醜く、3様に分裂したこの物語の結末をもう一度「虚構」によって紡ぎなおすのだ。そして、再び小さな反乱が起こるまで、それをいつまでも続けていくのだ。