スイートラブライフ

「ね、ミィも僕のほうがいいと思うよね?」

「あ~の、人には趣味とか趣向とかっていうものがあるので一概には……」

「じゃあミィもこの若造がいいっていうの?」

雑誌に載っている相手と真剣に張り合おうとする三十八歳に思わず噴き出す。

「ぷっ……もうやめてください。オミ君のほうが素敵ですよ。彼はみんなのアイドルですけど、オミ君は私だけのアイドルですから」

そう言うと、納得したように私の頭をギューっと胸に抱き寄せて“いいこ いいこ”をする。

最近やっと大倉さんの扱いになれてきて、こういうときは恥ずかしいセリフを目を見て言うとたいてい納得してくれる。

拗ねられると後の要求が激しくなるので、ここは羞恥心を捨てるに限る。


「で、用事ってそれだけですか?」

私が腕の中で顔をあげて大倉さんに聞くと「はっ」として急に真顔になった。

真剣な顔してどうしたの?

「この記事見て」

そう言って再度指差したのはアイドルが掲載されている次のページだ。

掲載されている見出しを見るとそこには【今日は特別! 大好きな彼に私から……】と大きく書かれていた。

「ちゃんと読んでよっ!」

ぐいっと雑誌を突き付けられて、内容を確認すると「今日は自分から誘ってみよう」とか「たまには寝室以外でも」とか佐和子先輩にこの雑誌をもらったことを激しく後悔する様な内容で……。
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